本研究では、幼稚園での音楽養成におけるLiederfibelの、教材としての活用を企図してグリューガー本人が1929年に記した“Liederfibelとその実践的応用”を読み解き、グリューガーが絵譜に込めた教育的意図を考察した。Liederfibelを用いた実践をとおしてグリューガーが目指したことを整理すると、その根幹は、音楽の中にうごめく生命感や躍動感を捉えようとする子どもの本能に、子どもにふさわしい方法で語りかけることによって、自然と主体的な音楽へのかかわりへと導こうとする、子ども主体の態度に根ざしたものであったと読み取ることができた。聴覚と視覚を連動させながら子どもたちに音楽を意識的に探求・体験させることによって、歌と音楽の仕組みの感覚的把握に導き、音楽の楽しさを目覚めさせていたことも、実践内容から明らかになった。