本論は筆者らが勤務する大学施設内における、親子の主体性と学生の学びを両機軸とした、乳幼児親子のための参加型コンサートの実践報告である。本実践においてコンサートのような聴取・感受を目的とした音楽活動が、幼い鑑賞者にとって主体的な活動となり得るのかを検証した。
教育現場におけるコンサートとして学生に最大限の学びを保障しつつ、同時に参加親子からの満足感や達成感を得ようとするためには、実践者が企画・実行に至る道のりを開示し、互いの意見を聞き合うことが不可欠であった。さらに幼児の音・音楽への興味を喚起し、幼児の音楽活動への能動的参加と感受を促すためには、コンサートのコンセプトの明確化、適切な時間配分や環境構成、周到なプログラム準備と進行計画が必要であった。これらの調整を成し得た場合、コンサートのような聴取・感受を目的とした音楽活動が、幼い鑑賞者にとって主体的な活動となり得ることが確認できた。