本研究は、幼児の音楽鑑賞についてその意義を検討したものである。筆者らが行った幼児向けコンサートのビデオ映像から、子どもやその保護者がどのように音楽を鑑賞しているかに着目し、特徴的な場面を取り上げて分析を行った。そして、そこから得られる教育的効果やその意義について、教育・保育要領の領域「表現」の記述と照らし合わせて検証した。その結果、幼児向けコンサートの鑑賞によって、豊かな感性を育むこと、自ら表現し、自分の気持ちを他者に伝えようとする意欲と力を培うこと、音楽に親しむ態度を育むことが明らかになった。さらに、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の「(ウ)協同性」「(オ)社会とのかかわり」「(コ)豊かな感性と表現」を育むことに繋がるとの示唆を得た。