絵譜は,日本の音楽教育の歴史において読譜指導を補う教材として,独自の変貌を遂げながら使用されてきたが,昨今はほとんど目にすることがない。そこで本稿では小学校音楽科検定教科書に掲載された「きらきらぼし」の題材に焦点を当て,21種類の絵譜を横断的に比較・分析を行い,絵譜の隆盛と衰退の要因を探った。そこからは,①各社それぞれに独自性や類似性のある絵譜描出の創意工夫があったこと,②五線譜に準ずる機能性を一つでも多く絵譜に盛り込もうとする姿勢,③絵譜と五線譜の折衷過程,④絵画性より機能性を向上させることが最優先事項であったということ,⑤絵譜の絵画性の欠如は挿絵によって補完され,紙面全体の絵画性が担保されていたことが明らかとなった。