『荒地』第5章「雷のことば」は『ブリハッド・アーラニカ・ウパニシャッド』第5章第2節の「雷のことば」から取材されているが、この箇所はウパニシャド以前の「アーラニヤカ」に属すると考えられ、祭式に関連する思想が色濃く反映され、『荒地』の構想も『祭式からロマンスへ』に基づいていることに呼応する。「アーラニヤカ」の特色を概観し、「雷のことば」が、言語と世界観、すなわち、語源解釈による神々・人間・悪魔による三様の解釈を示すことを考究し、『荒地』が現代文学に与えた影響の中から、ボブ・ディランの「廃墟の街(Desolation Row)」を取り上げる。