初期仏教研究5【阿含と大乗経典】先尼外道は『大乗涅槃経』において世尊に執拗にアートマンを問い、その見解が破せられる。一方(般若経)では冒頭に登場し、随信行によって諸法実相に悟入し、『涅槃経』の先尼とは著しく趣きが異なる。『雑阿含経』における先尼の無我観は空思想に裏付けられ、『涅槃経』と〈般若経〉の先尼についての著しい伝承の相異も、いわば無我観の表裏の関係で、両経とも『雑阿含経』「仙尼経」に基礎を有する。