本論は、ナショナリスティックな近代仏教思想である「日蓮主義」が明治末から大正期にかけて社会的に普及していくプロセスを、高山樗牛、妹尾義郎、石原莞爾の事例に即して分析した論文である。 そもそも日蓮主義は明治中期に仏教者の田中智学と本多日生によって創唱されたが、その影響は広く一般社会に及んだ。その普及の社会的条件を考察するとともに、日蓮主義がどのように受容されていったのを分析し、日蓮主義が近代日本の思想的水脈であったことを明らかにした。