本発表では,当時外交の玄関口であった明州を基軸に置いて,そこで処理される外交文書を取り上げ,宋代における外交の多様性を提示し,かつこうした外交文書に媒介されて展開される宋代東アジア海域世界の一面を提示した。 宋代明州において漢字文化圏にない真里富国が朝貢してきた際,明州では真里富国の国書を漢文へと翻訳し,その翻訳国書を皇帝に提出していた。さらにその翻訳国書は中国古典を踏まえた四六文で書き直され,もとの国書と内容が異なっていることもあった。ここに見られるのは,たとえ漢字文化圏にない国の国書であっても,翻