呉越国の権力構造は,別の一面として天下秩序を越えて,海上覇権の性質をも持っていた。本論ではその点を踏まえて,契丹・朝鮮・渤海・日本・南海諸島等にまで及ぶ呉越国の海上政策を明らかにした。そしてその背景に,9世紀から東アジア海域での海上交易が呉越国の勃興した両浙地域を中核として盛んであったことを論じた。