『高野雑筆集』の末尾混入の書函群は,9世紀中葉に唐から日本に招聘された義空に宛てたもので,浙東地域の海商徐公直兄弟から送られたものも含む。徐公直は弟徐公祐を日本へ使わせ交易を行い,日本朝廷はその対応として大宰府鴻臚館の唐商利用許可や唐物使派遣などを開始した。この徐兄弟は,もと浙東地域の出身であったが,9世紀初め頃の人口過剰流入に伴い大都市に転出する傾向のなかで,海上交易の契機を得た一家であった。