本稿では「天下」の中核をなす「中国」について論じた。天下が四分五裂した五代十国時代では,「中国」は中原王朝の直接実効支配領域を意味した。しかしこの「中国」は自明の領域ではなかった。中原王朝の支配領域であることを表現するために,理念的に境界領域が設定されていたのである。それは東西南北の境界を表現する爵号である平王が「中国」内に設置されることであった。つまり五代期においては直接実効支配領域の際限の藩道などが分離していく中で,直接実効支配領域としての「中国」の政治表明として「平王」を設置していたのであり,「北平