キーワード:市舶司 公憑 牒 九世紀以降,海上交易の盛行によって,宋朝国家は新たに沿海地域での行政に直面することになった。宋代市舶司は沿海行政のうち貿易と外交を扱った。本稿は主に市舶司における貿易に関する行政について,そこで往来される文書を手がかりに明らかにすることを主題とする。従来の市舶司に関する主な研究が官制研究を中心としているのに対し,市舶司の文書の発給・往来を取り上げることで,市舶司行政ひいては中国専制国家の沿海行政に関して新たな一面を明らかにしうると考えるからである。