2016 年に施行された「障害者差別解消法」では、就労障害者に対する合理的配慮が求められている。一般に障害者は、有する障害の特性により、健常者向けに開発された機器に適応することが難しいため、就労障害者の安全衛生においては、個々の障害に配慮した対応が必要である。しかし、我が国では安全・健康配慮の具体策を策定するための知見が蓄積されておらず、就労障害者における労働災害や二次障害の発生リスクに対し、有効な対策が示されていない[白星ら2020]。
就労障害者の労働災害の実態把握と安全衛生対策確立には、障害者の心身機能および作業環境の双方を同時に評価することが不可欠である。そこで我々は、就労障害者の労災事故や二次障害を初めとする健康問題について、対面聴き取り調査・質問紙調査を通じて発生状況を把握するとともに、多職種が関わって就労障害者の心身機能と作業環境を評価し、安全衛生におけるリスク低減のための改善提案を行うことを目的として本研究を実施した。