本稿の目的は,統合失調症者が定位家族から独立するまでのプロセスを明らかにし,統合失調症者支援に関する示唆を得ることである.定位家族からの独立を経験した9名の統合失調症者へ半構造化面接を実施し,TEM(Trajectory Equifinality Model:複線経路・等至性モデル)で分析した.分析の結果,本人のソーシャルサポート・ネットワークにおける親の支援の割合は,時間経過とともに小さくなっていた.親が担っていた手段的なケアの多くは専門家へ移行し,情緒的ケアは継続していた.親子関係は,ケアする側とされる側という非対称の関係から,お互いがお互いを気遣う対等な関係へと変容していた.9名中8名は,定位家族のなかで生じる親やきょうだいとの関係性の悪化を,独立の契機としていた.これらのことから,本人の社会参加の支援には,家族をアセスメントの対象とし,支援の選択肢に「定位家族からの分離」を含める必要性が示唆された.