本研究では.音楽に関する様々な活動をとりあげ,そこに生起する実践知を探究する上 で.期待される成果と方法論上の課題を明確にし,それらを横断的に検討することによっ て.これからの音楽教育研究の可能性を拡げることを目的としている。まず,知に関する 先行研究を概観しながら.実践知の構造と特徴を整理した。これを踏まえた上で.音楽に 関する実践知研究5事例を示し(1)実践者の暗黙知の抽出. (2)実践共同体における対話 的知の解明. (3)指導・学習場面への応用可能性の検討.の視座から考察を試みた。その結 果「音楽における実践知は.いつ,どのようにして生成・発揮・更新されるか」という問 いに対する知見に基づき.新たな実践現場での応用可能性を研究者と応用者が共同で探究 することが将来的な課題として示された。