本研究は,幼稚園の「幼稚園教育要領」へのデューイの影響を明らかにすることを目的とする。現在のわが国の幼稚園教育の基本方針が目指すことは, 子どもの主体的な活動の尊重, 遊びを通しての保育, 一人一人の特性に応じた保育である。これはデューイの児童中心主義を基盤とするものである。また,わが国の現在の幼稚園教育に直接大きな影響を与えている倉橋惣三の提唱する「生活を, 生活で, 生活へ」という思想は,デューイの経験主義と意を同じくするものである。デューイ思想が,倉橋を通してわが国に受容されたと考えることができる。そこで近代教育思想を概観し,デューイの位置づけを明確に示した上で,わが国の幼稚園教育が如何にデューイ思想を受け入れたのかを検証した。