これまで花森安治に関する研究は『暮らしの手帳』誌上の「商品テスト」以降の仕事に限定されたものであったが、本稿では「商品テスト」に至る以前の著作において、花森が提唱した「暮らしの美意識」がどのような特徴をもっているかを明らかにした。「日常」「実用」「個性」「変化」といったキーワードで示される花森の美意識の特徴を分析することで、花森の生活全般を対象とした啓蒙活動の根底にある思想について考察を行った。