本稿では現代生活になくてはならない道具の一つとして冷蔵庫を取り上げ、その生活財としての成立過程を明らかにした。食品貯蔵の方法として「冷蔵」概念が普及するためには、製氷業の産業化による夏場の氷の流通に加え、商品として冷蔵庫の販売、家政書や婦人雑誌での啓蒙活動等が必要であった。大正期に発行部数を伸ばした婦人雑誌の記事を分析することで、氷の冷蔵庫が生活財として意味づけられていく過程を明らかにした。