サリンジャーの作品は、前期の作品群と後期の作品群とに二分することができる。この間に語り手法は大きく変化し、結果的にその文学的価値は損なわれてしまうことになる。しかしそもそも後期の作品群における彼の目的は文学的価値の追求などにはなかったのではないか、本当の目的とはそれらの作品を通して読者の中から自分と同じ種類の人間を選別することにあったのではないかというのが本発表の主旨である。