キーワード:語り、自己欺瞞、進化心理学、サリンジャー、『ライ麦畑でつかまえて』 本論文は、『ライ麦畑でつかまえて』の主人公ホールデンの語りにおいて自己欺瞞が機能しているメカニズムを明らかにしている。さらに、我々が自己を含む様々な物事を認識する時に、正しい認識と欺瞞とのどちらを優先させるのかという問題を取り上げている。この問題に関しては、外的な物理的世界については、正確な認識を必要とし、自己認識については、自己欺瞞が助けとなる場合が多々あると結論づけている。