キーワード:語り、メタ表象、シーモア・グラス サリンジャーは後期の作品おいて、以前の作品に登場した人物を、以前の作品で描かれている人物像とは異なる人物として再度登場させている。その際、後期の作品で描かれている人物像こそが本物であることを強調するために、彼が登場した以前の作品の語り手を信用の置けない語り手として無効化するという巧妙な語りの策略を用いている。本論文はそのメカニズムを「メタ表象」の観点から解明し、いかにして語り手が読者の読みを誘導していくのかを明らかにしている。