本論文では、自閉症と文学との関係を概観した上で、サリンジャーが自閉症的傾向を強く持っていることを彼の伝記を根拠にして示し、その作品に自閉症作家特有の特徴が見られることを明らかにしている。これまでサリンジャーの作品は、彼の戦争経験、彼が深く影響を受けた禅仏教、そして精神分析などの観点から解釈されてきたが、自閉症的なパーソナリティという観点から読むと、また別の新たな解釈が可能となってくるだろう。