『ライ麦畑でつかまえて』の中のホールデンと恩師アントリーニが話し合う場面で、語り手ホールデンによる語りの内容にかなりの混乱が見られるために、その場面で実際に何が起こったのかについて批評家の間で意見が二つに分かれている。発達心理学の概念である「心の理論」をめぐる様々な現象の中に「心の読みすぎ」という現象がある。本論文では、この「心の読みすぎ」という現象に焦点を当て、この二人の対話を解釈している。