本論文は、サリンジャーの作品の中でも極めて優れた作品と評価の低い作品を取り上げ、それらの作品に、作品が掲載された雑誌の編集者がどの程度関与したのかを2012年に出版されたスラウェンスキーの伝記をもとに比較している。サリンジャーの各作品の出来不出来には極端な差があるが、私はその極端な差は、編集者によって生じたのではないかと考えている。実際に比較してみると、編集の関与が強い作品ほど優れた作品となっており、逆に関与がなかった作品ほど冗長で評価も低い作品となっている。