武漢の小説が“漢味”小説と呼称されるにいたった経緯を池莉を中心に概観した。中国の社会の変化により、都市文学を受容できる地盤ができあがっていた背景のなか、武漢における“漢味”小説の効用について指摘した。それは都市として立ち遅れた感のあった武漢にとって、上海や北京への文化的優位性を示し、それにより武漢の都市としての復権を図ろうとしたのであった。また地域色を強く打ち出すことで、作者自身を含む武漢人の自己意識の啓発を促そうというものであった。特に池莉は90年頭の作品世界では武漢と沔水鎮という二重構造を取ることで、