2002年、障害者基本計画が閣議決定され精神障害者施策は重点項目とされている。しかしその内容は居宅支援が主であり、生活の中心に位置づけられるべき雇用・就業への言及は十分でない。筆者はこれを非常に大きな施策の限界と考えており、かつその原因を「精神障害者が一般社会で働くこと」の理念が確立しておらず、方向性が曖昧になっているためであると考えている。そこで、本稿では改めてその意義を問い直している。なお筆者は精神障害者の労働政策について研究しており、本稿はそのうちの理念を問う部分である。就業の意義を論じるに当たっては、はじめに労働政策の変遷を辿り(I)、日本の精神障害者就業施策の現状を国際比較検討した上で(II、III)、改めてその意義を捉えなおす形をとっている。さらにその意義については、精神障害者のリハビリテーションから、人権保障、社会的意義とより社会的な視点で展開している。(IV)