74歳男。糖尿病、心房細動、心原性脳塞栓症、Binswanger病の既往があり、座位の安定や移動手段の改善など、ADLの向上を目的として理学療法を開始した。しかし、体位交換時や動作時に起立性低血圧(OH)が頻発し、その都度、訓練を長時間中断して血圧回復に対応する必要があり、訓練の継続が困難であったため、姿勢をあまり変えずに実施できる反復足関節底屈運動(HUD)を開始した。訓練中に意識低下等のOH症状が出現した際、血圧測定後に毎秒一回のスピードで10回のHUDを実施したところ、血圧は速やかに回復して訓練を継続でき、数週後には訓練中や体位交換時の血圧低下も改善した。下腿三頭筋の収縮、弛緩を反復することで効率よく心拍出量を増大させ、血圧を上昇させるHUDは、OHによる訓練中断を防ぐ手段として有効であった。