成熟雌ラットを卵巣摘除(OVX)群、低エストロゲン群、高エストロゲン群に分けた。3グループの凍結切片を作成し、NADPH-diaphorase(d)法および一酸化窒素合成酵素(NOS)に対する抗体を用いて免疫組織化学法を行い、視床下部のanteroventral periventricular nucleus(AVPv)、medial preoptic nucleus(MPN)における陽性ニューロン数を計測した。AVP_VではNADPH-dおよびNOS陽性ニューロン数に変化は観察されなかったが、MPNにおいては、高エストロゲン群においてOVX群や低エストロゲン群に比べて有意にNADPH-dおよびNOS陽性ニューロン数の増加が認められた。次いでin situハイブリダイゼーション法を施行した。nNOSmRNAに対するプローブは、45ベースのオリゴヌクレオチドプローブを35Sにてラベルしたものを使用した。AVP_VやMPNにおける陽性細胞数、陽性細胞上の銀粒子数はOVX群と低エストロゲン群との間に有意な差は認められなかった。高エストロゲン群について現在解析を進めている。また、OVX群および低エストロゲン群を用いてマイクロダイアリシス法を施行した。プローブをAVP_Vに刺入し、15分ごとにサンプルを回収し、NOとアミノ酸をHPLCにて解析した。NMDAによる刺激に対するNO産生の増加に有意な差は観察されなかったが、NMDA刺激によるGABA放出量は低エストロゲン群において有意に増加しており、NMDAレセプターを介したエストロゲンによるGABA放出の調節が示唆された。 以上より、視床下部視束前野のNO産生は、diestrusに相当する低いエストロゲンレベルにおいては変化を受けないが、proestrusに相当する高いエストロゲンレベルによって影響を受ける可能性が考えられた。