転写調節因子として位置づけられるステロイドホルモンレセプターの細胞内局在、分子生物学、形態学、生理学の異なる方法を用いて明らかにし、これらの転写調節因子の細胞内での動向と生理的役割について、日本、米国、英国、オランダの4カ国の共同研究者によって追求した。具体的には、転写調節因子であるステロイドホルモンレセプターとコファクターの細胞内局在の同定、ステロイドホルモンレセプターのノックアウトマウスを用いて行動学研究、とくに動物実験によって得られた脳組織をホルモンレセプターの免疫細胞化学法によって解析した。また、ステロイドホルモンレセプターに対する抗体を用いて、ホルモンのリガンドがない状態(副腎摘出、卵巣摘出、精巣摘出、甲状腺摘出)とリガンドを与えた状態でのレセプターの細胞内局在を、GFPを用いたリアルタイムイメージング法や免疫細胞化学的に明らかにした。とくに、リガンドの濃度による細胞内動態がグルココルチコイドレセプター、ミネラルコルチコイドレセプターにおいて認められた。これらの研究成果は、日本国内での学会はもとより、米国や欧州の神経科学学会において発表した。また、各研究者間の最新データについての情報の交換を頻繁に行い、この分野でのプロジェクト遂行に貢献した。なお、平成11年度に来日予定していたPaul Sawchenko博士は健康上の理由により来日をとりやめた。