申請者らはGFPとの融合によりステロイドホルモンレセプターの細胞内局在をリアルタイムで追跡する実験系を確立した。GFPおよびそのspectral variantであるCFP、YFPなどと種々のステロイドホルモンレセプター(グルココルチコイドレセプター(GR)、ミネラルコルチコイドレセプター(MR)、エストロゲンレセプター(ER))あるいは共役転写因子のSRC-1(steroid receptor co-activator-1)とのキメラ遺伝子を作成した。これらをCV-1,COS-1細胞、初代海馬培養神経細胞、初代培養グリア細胞などにリポフェション法によりトランスフェクションし、レセプターや共役転写因子がリガンドの添加や細胞外環境の変化に対してどのような挙動を示すのかを、落射型蛍光顕微鏡および冷却CCDカメラにてコンピューターに画像を取り込み、リアルタイムに追跡してきた。その結果、GRはリガンドの非存在下では主として細胞質に局在し、MRは細胞質と核の両者に分布することが認められ、リガンドの添加によりGRおよびMRともに速やかに核内へ移行することが、また核内移行に際して微小管などの関与は認められないことが明らかになった。さらに、GRおよびMRを各々CFPおよびYFPでニ重標識して同一細胞内に共発現させた実験において、核内移行速度は内因性のレセプターをもたないCOS細胞ではリガンドに対する親和性の差を反映していたが、内因性のGRおよびMRが共発現する海馬の神経細胞ではリガンドに対する親和性を反映した核移行速度の差は認められず、異なる核輸送の機構が存在する可能性が示唆された。一方、ERはリガンドの存在の有無にかかわらず、核内に局在することも確認された。また、GRとCFGおよび共役転写因子のSRC-1とYFPの融合蛋白を同一細胞に共発現させ、その動態をリアルタイムに解析した。SRC-1はリガンドの存在の有無にかかわらず核内に局在するが、その存在様式はリガンドの添加によりGRが核内に移行する前後で、ドット状の分布から網状の分布へと変化することが観察され、核内においてGRと挙動を共にするように分布状態が変化することが示唆された。