本研究では自尊感情従属変数モデルの視点から乳幼児を対象とした自尊感情の発達を捉える縦断研究を計画する。同時に並行して,自尊感情独立変数モデルの視点からは青年期以降を対象とした自尊感情が適応的行動を動機づけて精神的健康の維持に貢献するメカニズムを検討する調査研究を行う。最終的に自尊感情の生涯発達を捉える理論的モデルを導出することを目的とする。本研究によって,子どもの自尊感情を高めるためにどのような経験や環境が重要であるのかが明らかになる。また成人における対人関係・社会関係を中心とする日常生活の中で適応をもたらす自尊感情の特徴や機能が明らかになる。新しい自尊感情概念が乱立して研究間の比較や成果の蓄積が行われにくくなっている現状の問題を乗り越えて,本研究が提示するモデル―すなわち,生涯発達という長期的視点と因果関係を明確にした理論的モデル―を統一場とし,今後の自尊感情研究は相互に互換可能な研究知見の蓄積が可能になるという波及効果が期待される。