この報告では、次に示す年金・健康保険関連の3つのEU指令の政治過程を、欧州議会での審議状況、閣僚理事会での審議状況とあわせて詳細に検討して、EU政策が各国の福祉国家改革に有意に影響を及ぼしている様を示した。年金関連の指令では、2003年6月3日成立の「IORP 指令(2003/41/EC)」、2014年4月16日成立の「年金ポータビリティ指令(2014/50/EU)」が存在する。健康保険関連の指令については、約7年がかりで成立した、2011年3月9日の「患者の自由移動指令(2011/24/EU)」が存在する。これは、ある加盟国の国民が越境して別の加盟国の病院等で診療等を受ける場合に、自国での健康保険の適用・償還を可能とする道を開こうとしたものである。