欧州債務危機対応をめぐるEUでの政治過程を「連帯」という価値規範に照らして分析している。ギリシャ債務危機対応プロパーでは、緊縮財政遵守の維持・強化という意味での「政治的義務」を基調とする支援枠組のバリエーションに、付加的な形で「コミュニティ」的な要素や「利他主義」的な要素の連帯の濃淡を見出している。併行した「経済ガバナンス強化策」においては、「政治的義務」の内容が反転されつつ、「コミュニティ」としての連帯志向が読み取れ、基調としては「コミュニティ」が優先され、その手段として「政治的義務」を強化するという議論の展開も確認した。「連帯」のあり方の見解相違にもかかわらずEU権限強化という形で統合が進展する論理を特にこの点に見出している。