2010年代に入り、EU域内に起因する「リベラル-保守」に関わる争点が、通常のEU政治過程、特に、欧州議会の審議過程で対立軸を構成する新たな事態が生じている。この対立構造を欧州議会での政党会派間の連携・対抗状況に見出し、そこで争点化した三つの事例を通じて解明している。リベラルな価値観を推進したいEU官僚制の欧州委員会としては、欧州議会のリベラル会派や社会民主主義会派と連携しつつ、EU域内での保守的な事象に対抗しようとしているが、制裁的な形でしか目的を実現できないジレンマを抱えている様子を明らかにしている。