(選定説明)受賞作 原田徹『EUにおける政策過程と行政官僚制』晃洋書房。本書は、EUの政策過程について、マクロ・メゾ・ミクロの三つのレベルの事例分析を通じ、政策立案と執行を担当する欧州委員会を合理的主体とみなし、他機関等との権限獲得争いにおける戦略と帰結を制度変化の4種類の分析枠組を援用し説明しようとするものである。日本の公共政策学でこれまで手薄であった国際行政、特にEUを対象とした研究であり、EUにおける政策過程を歴史的制度論の枠組みで理解すると同時に、事例分析によって欧州委員会の行動様式に対して先行研究とは異なる理解を提示している。また、時期ごとの経済的潮流や、EU重視路線か各国重視路線かなどの各種対立軸の重なり合いを意識しつつ議論を展開し、欧州議会における各政党、EU各国における与野党の選好についても精緻な分析をしている。結果として、現在の英国のEU離脱の動きを含めた主要な事象を理解するうえでも、また今後のEUの方向性を見据えるうえでも、重要な視点を提示することに成功している。