「玉野井芳郎の地域主義」と「日本の内発的発展論」の議論を比較検討し、地域産業の発展方向を分析する際の視座を確定することを課題とした。玉野井は「開かれた地域共同体」に基づいて、住民の自発性と実行力によって地域の個性を活性化し、住民が誇ることができる地域産業と文化を、住民が内発的に創造する必要性を提起した。一方で、鶴見和子は、民衆の貧しさと苦しみを軽減する過程を社会の発展と捉えた。地域に住む「キーパースン」は、自然環境と文化的伝統に適応するために、「伝統の再創造」を始め、必要の範囲内での創意工夫によって「人間の成長」を促進することが重要である。地域主義を内発的発展論で補完することで、経済活動の基層となる生態系を保全しながら、住民の必要の範囲内で経済と社会の発展を期する折衷的な視点を得ることができるようになる。