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本論文は、17世紀チェコの思想家ヨハネス・アモス・コメニウスの晩年の主要著作『人間に対する総合的熟議』の第3部『パンソフィア』の精読プロジェクトの一環である。 本論文では、コメニウス自身のパンソフィアの定義、近世ヨーロッパ思想史に関する最近の研究を通じたパンソフィアという用語の歴史的背景、そしてコメニウスの『総合的熟議』の構想とその執筆・出版の歴史を扱った。 本論文の主張は以下の3点である。 一部の研究ではパンソフィアという用語の使用が古代ギリシャに遡られるとされているが、それには疑問がある。 イギリスの思想史家フランシス・イェイツが主張しているように、イタリアの新プラトン主義哲学者フランチェスコ・パトリツィによって初めて論じられたかも不明である。 他方、ヨーロッパにおける最近の研究で明らかにされているように、フランスの人文主義者ペトルス・ラムスが17世紀の百科全書主義や汎智思想に多大な影響を与えたことは、日本の学界でも注目されるべきである。 |