本論文は,戦前期日本におけるコメニウスに関する言説の包括的な調査の一環である。国民教育
制度が確立された 19 世紀後半,近代教育の先駆者として,17 世紀チェコの思想家ヨハネス・コメニ
ウスが日本に紹介された。その過程の調査は,日本における西洋教育の受容のより深い理解に資す
るものである。昨年リニューアルした国立国会図書館のデジタルコレクションにより,さまざまな
文献における特定の単語の横断的な調査が可能になった。たとえば,1882 年に発行された『千葉教
育会雑誌』に掲載されたコメニウスに関する記事は,日本で最初の教育事典の編纂に携わった木村
一歩(1850-1901)によるものであることが明らかとなった。本稿では,これまでの研究の対象期間
でフォローできなかったいくつかの事実について提示した。