太宰治の中期の女性独白体の佳品である『女生徒』を、成立当時の新興芸術の受容をめぐる文壇状況や、太宰の交友関係を考慮しつつ、翻案の対象である『有明淑の日記』との比較を通して読解し、作中に〈語り〉の内実の転倒が起こっていることを指摘した。またこの転倒は、〈作者〉である太宰治の、作中における〈出現〉によるものであることを明らかにし、その転倒の意味を考察した。