三島由紀夫の文学観及び美意識を、ストーリーは勿論、登場人物の造型において、剽窃めくほどふんだんに織り込むことで成立している『欲望』に描出された、プラトニック・ラヴの両義的な内実を明らかにした。また、それを究極の観念の恋として描き出し、さらにこうした恋を成り立たせている観念のエロスを、現実の性から生ずる肉体的なエロスよりも、より官能的であると結論付けることの画期性を明らかにし、その野心的な試みを考究すると共に、評価した。