丸山薫の文学的出発点は〈詩〉ではなく短い小説であるが、当時、フランス帰りの岡田三郎が〈コント〉を提唱し、文壇はコントブームに沸いていた。この時代に求められた〈コント〉、そして川端康成の〈掌篇小説〉にかかわる言説を改めて検証したところ、同時期の反自然主義の主張が明らかとなった。また現代都市生活に適したもの、さらには大衆を視野に入れた上での、〈短さ〉が求められていたことも浮かび上がってきた。この〈短さ〉に日本の伝統詩歌である短詩系が重ねられ、ある種の〈詩情〉の希求が認められる。時代背景を踏まえて、丸山の提唱した〈オトギバナシ〉の内実を検証し、時代的な位相を考察した。