夏目漱石の「夢十夜」における所謂〈小品〉の系譜を引き継いだ、内田百閒の活動が本格化するのは大正期。その大正の後期に新感覚派による、新たな表現の模索の過程からコントの提唱等がなされるようになる。今日では詩人として知られる丸山薫は実はこうした時代の要請とも重なるかたちで、掌編小説によって文学的出発を果たしている。時代における〈小さな〉散文への志向の意味するところを、〈夢〉と〈郷愁〉を鍵語にして、同時期に書かれた丸山薫と内田百閒の〈鶴〉の登場する作品から考察した。