丸山薫の名を詩史において不動のものとした〈物象詩〉の内実を考究した。丸山には、詩と並行して散文への関心があり、そうした作品の中で述べられている言説を検証すると、モノの変化や運動への並々ならぬ関心がうかがわれる。そのころ受容において二度目の高まりを迎えていたリルケの、所謂〈事物詩〉ではなく、あえて〈物象詩〉を名づけられていることに鑑み、〈物象〉という語の意味を探ったところ、この時代〈物象〉は〈物理〉の教科名であったこと、また古代の物理学者ルクレチウスの受容が盛んだったことが分かった。それを踏まえ、〈物象詩〉に込められた丸山の世界観を考究した。