富永太郎の詩世界の構造、そして表現の核心ともいえる両義性とでもいうべきものが、サンボリスムもその影響を受けた錬金術等の、西洋の中世からルネッサンス期の思想及び世界観に共振した、極めて強い観念性によって構築されていることを明らかにした。そのうえで、富永太郎の芸術的営為、その位相が、様々な意味における19世紀的なサンボリスムと20世紀的な新興芸術の〈界〉に在ることを確認した。