中原中也記念館及び神奈川近代文学館所蔵の未刊行資料からみえてきた、富永太郎の築地小劇場や村山知義等、同時代の新しい舞台芸術への深い関心を踏まえて、富永の詩世界が、ロシアの前衛的な演劇人メイエルホリドが主張していた、〈グロテスク〉という手法にも通底するような、「ドラマツルギーの詩学」ともいえるものによって成り立っていることを明らかにした。また、詩世界の解釈と鑑賞を通じて、この「ドラマツルギーの詩学」の内実を論究した。