山田詠美の初期の佳作『ベッドタイムアイズ』において、繰り返される赤裸々な性の描写と併行して、様々な食の場面が描出されることに着目し、不可視のものを認識する〈眼〉の発見や、その〈眼〉を通じた視覚による愛の認識に至る過程を追った。またこの作者の初期の作品に見られる独特の文体のリズムが、精神的な愛の認識に至るまでの、この小説の抒情性を高めていることを文章構造の分析から論証した。