中原中也が生涯を通じて評価し続けた日本未来派詩人・平戸廉吉は、日本未来派宣言という主張の前衛性や、それに基づく前衛的な作品ばかりが知られているが、実は晩年に「第四側面=第四次元」と「アナロジズム」という詩境を主張していた。未来派や表現派等、様々な新興芸術思潮が混交して成り立つその詩観は、平戸の詩世界の中でも〈空〉の表象に特徴的にあらわれる。一方、中原中也も〈空の詩人〉と称され、〈空〉には特別な想いがある。〈空〉の表象をめぐる2人の詩人の意外な接点を指摘し、中也が平戸を評価し続けた理由を明らかにした。