中原中也の〈幻視〉系の詩群における象徴的なイマージュとして登場する、〈空〉に浮遊する〈死児〉の表象について、〈女〉の表象とあわせて検証し、一見すると奇怪かつ不吉に思われる〈死児〉の表象が、中也の所謂〈名辞以前〉という詩観を体現する重要なイマージュであったことを、詩篇を詳細に読み解くことから明らかにした。そして、これらのイマージュが中也の詩観の核心ともいえる詩の無償性及びそれに基づく言語観の原点であることを考究した。