中原中也記念館・神奈川近代文学館所蔵の、富永太郎関連の未刊行資料のうち、富永太郎の「切抜帳」に着目し、個々の切り抜きの出典を調査することで、大岡昇平の著作では決して取り上げられることのなかった、富永太郎の舞踏・演劇といった新興芸術の身体を用いた舞台芸術への関心の内実を明らかにした。さらに、当時の時代状況から浮かび上がって来る東西の文化・世界観の相克の問題が、富永の芸術的営為にも深い影響を及ぼしていることを、同時代文献との照応等の実証的な手法によって論究した。