太宰治の『女生徒』が、これまで知られていた『有明淑の日記』だけでなく、「意識の流れ」という手法を用いた、イギリスの女性作家ヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』をも翻案した二重の翻案小説であることを、当時の日本におけるウルフの受容を交えながら明らかにした。また、これによって逆説的な形ともいえる〈浮遊する少女性〉という、ある種の瞬間的な生の在り方が、日記にはなかった太宰のオリジナル部分であるロココ料理の場面に投影されていることを論証した。